今年のスギ花粉症につきまして

2月になり寒い日が続いておりましたので、インフルエンザや風邪ひきの患者様も受診されていますが、そろそろ花粉症の患者様もお越しになられています。

今はまだ症状はあまり強くない方が多いのですが、今年のスギ花粉は過去の平均と比較するとやや多め、昨年に比べるとやや多め、ピークは3月上旬から中旬にかけてと予想されています。

これは昨年夏の気候が高温、少雨、日照が多く、花粉の生育にとって良い条件だったためです。

スギ花粉のピークが過ぎて3月の後半になると、今度はヒノキ花粉の飛散が増え始めます。今年は、ヒノキ花粉のピークは例年並みの4月上旬から中旬にかけてと予測されています。

今年は飛散量が多くなることが予測されているので症状が出現する前から花粉対策をお取りいただくほうが良いと思います。薬の内服につきましては、一般的に症状が出始める前から服用開始したほうが良いと言われておりますので、はやめに内服を開始するか、あるいは症状が出始めたらすぐに開始できるようにあらかじめ準備しておいていただいていても良いと思います。

当院では、花粉飛散期には、抗アレルギー薬の内服や局所療法、漢方治療、重症スギ花粉症の方に生物学的製剤の注射などを行っております。内服薬の副作用としては眠気が生じることがありますが、いろいろな種類のお薬がありますのでご相談いただければと思います。

旅行や帰省で起こる耳鼻科の疾患につきまして

今年も年末となり、残すところあと数日となりました。

今年は行動制限がありませんので、年末年始には旅行や帰省などを計画されておられる方も多いと思います。

新型コロナ感染症数や季節性インフルエンザは増加傾向ですので、基本的な感染対策を行ってお気をつけいただきたいと思います。

さて、旅行や帰省によって生じる耳鼻咽喉科の病気としては、風邪やインフルエンザ、新型コロナなどの感染症以外にもあります。今回はこれらについてお話したいと思います。

まずは乗り物酔いです。乗り物酔いは内耳のバランス感覚と目の視覚情報が一致しないために自律神経が混乱して生じると言われています。対策としては、充分な睡眠、空腹や満腹を避ける、お薬を準備しておくことです。乗っている時には進行方向を向く、揺れの少ない場所に乗る、遠くの景色を眺める、換気の良いところにいることなども大切です。

二番目は航空性中耳炎です。飛行機に乗っている時に気圧の急激な変化により生じ、特に下降時に起こりやすいと言われています。水などの飲み物を飲んだり、アメやガムを食べる、あくびをするなどで予防して頂きたいと思います。可能な方は耳抜きを行っていただくことも効果的です。軽症では数時間以内に治りますが、鎮痛剤でも痛みが取れない場合や聞こえまで悪くなった場合には、なるべくはやめに耳鼻咽喉科の診察を受けて頂きたいと思います。

最後にアレルギー性鼻炎です。実家に帰ると鼻水くしゃみを連発したり、鼻症状だけでなく咳や喘鳴などの症状のためつらい思いをされる方もおられます。ほこりやダニ、ペットなどの動物のアレルギーが原因として考えられます。予防としてお薬を事前に準備しておくことが大切ですが、帰省中にもよく休むなど体調管理を行っていただきたいと思います。

寒い日が続きますがお体を冷やさず暖かくして、楽しい年末年始をお過ごし頂きたいと思います。

聞き取りにくさにつきまして

猛暑の夏が続いていましたが、最近は比較的涼しくなってきました。

さて今回は 聞き取りにくさについてお話ししたいと思います。

耳鼻咽喉科外来を受診される方の中で、人と話す時に聞き取りにくいと言われて受診される方がいらっしゃいます。

診察では、外耳や鼓膜に異常がないか確認して聴力検査や鼓膜の動きの検査などを行います。突発性難聴などの異常があればその治療を行いますが、診察や検査で異常がない場合もみられます。

患者様のお話しを聞くと様々な聞き取りにくさがあります。

周りがざわざわしているときに聞き取りにくい、聞き間違いが多い、複数の人と話すと聞き取りにくい、電話が聞き取りにくい、特定の人の声が聞き取りにくい、音は聞こえるが言葉として聞き取りにくい、話す内容が理解できないなどです。

聴力検査で異常はないのに聞き取りにくい症状の場合には「聴覚情報処理障害」も考えられます。聴覚情報処理障害は脳の中での聴覚の情報をうまく処理することができないために難聴と同じような状態を引き起こします。聴覚の検査だけでなく脳の機能や発達なども含めて様々な多角的な検査を行いますが、この疾患の診療を行っている医療施設はとても少ないのが現状です。

「聞き取りにくさ」は耳だけでなく脳の機能も関係しますので、将来的には耳から脳まで総合的に「聞き取りにくさ」が解明されることを期待しています。

寒暖差による鼻水につきまして

6月というのに梅雨も明けて真夏の日差しと暑さが厳しくなってきました。エアコンをうまく利用して過ごしてゆきたいと思います。

今回は寒暖差による鼻炎につきましてお話しします。

暖かい所から寒い場所へ移動したり、朝起きた時やクーラーの冷たい空気を吸ったり時にさらさらした鼻水、くしゃみ、鼻つまりを生じる鼻炎は、寒暖差アレルギーと呼ばれることがあります。

これは、正式には冷気吸入性鼻炎、寒冷性鼻炎などと呼ばれます。

鼻の血管は自律神経によって調整されています。冷たい空気や急激な温度変化に対して自律神経の調節がうまくいかない場合に鼻の症状が現れます。

症状はアレルギー性鼻炎と似ていますが、スギやダニなどに特定のアレルゲンにより引き起こされるものではなく、純粋なアレルギー反応ではありません。

診断としては、アレルギー検査を行います。検査でアレルギーと確定できない場合に血管運動性鼻炎の可能性があり、寒暖差による鼻炎はこの血管運動性鼻炎と言われる病態に近いと言われています。

寒暖差による鼻炎に確立された治療法はありませんので、アレルギー性鼻炎に用いる抗アレルギー薬を代用します。これらの薬で効果のある方もおられますが、効果が出ない方もおられます。漢方薬などで治療を行うこともあります。

アレルギー性鼻炎以外の鼻炎については、まだまだ分かっていないことも多くあります。今後の解明を期待したいと思います。

声の老化につきまして

晴れた日には青空が広がり爽やかな風が吹く季節になってきました。

今回は声の老化についてお話します。

年を取ると声も老化して行きます。50歳ごろから声帯が萎縮して老化が始まるといわれています。

症状は、声のかすれ、大きな声や高く美しい声が出ない、長く話せない、流ちょうに話せない、などです。

原因としては、肺活量の低下、声帯やのどの筋力の低下、声帯の粘膜の萎縮、声帯の分泌腺の分泌が低下して乾燥すること、があります。また、舌やのど全体の筋肉も衰えるので声の響きや滑舌も低下します。

加齢により声帯が痩せて細くなると、しっかり閉じなくなり発声時に隙間ができて空気が漏れてかすれてしまいます。(下図写真)

左右の声帯は萎縮して凹んでいます  発声時に隙間を認めます

加齢変化を完全に防ぐことは難しいですが、できるだけ良い声を維持するためにはどのようにしたらよいのでしょうか?

普段あまりしゃべらない方は、声帯筋を維持するため声を使う事がとても大切です。新型コロナでお家時間が増えて、以前に比べて人と会話することが減っている場合には、ご家族との会話を増やしたり、本の朗読などで適度に声を出して頂きたいとです。

また逆に、声の使い過ぎの方は声帯の安静を心がけて、大声を出したり無理に高い声をだすことを避けたり、長時間しゃべらないことが大切です。

声帯を保湿するためにこまめに水分を摂取することも重要です。

逆流性食道炎のある方は胃酸がのどを傷めることがあります。逆流のある方は、寝る前に食事しない、胃酸を増やす食べ物(トマト、酢、ワイン、カフェイン、炭酸、紅茶、チョコなど)を食べ過ぎない、また過度の飲酒とタバコは避けると良いです。寝るときに枕を高めにすることもよいと言われます

声の専門治療を行っている施設では言語聴覚士の方の専門的な音声治療やボイストレーニング、手術治療が行われています。

声の弱い人は食べ物を誤嚥しやすく、逆にしっかりした声の方は嚥下機能も良いので、声を出すことが誤嚥の予防にもなります。

最近声がかすれてきた方は、喉頭がんやポリープなどの病変がないかどうかも確認しておく必要がありますので、まずは耳鼻咽喉科を受診してください。

中耳炎の経過につきまして

最近は20℃を超えて暑くなったり、冬の様な冷たい風が吹く日もあったりなど体調管理が難しい季節となりました。

さて今回は、中耳炎の経過についてお話したいと思います。

中耳炎は子どもに多い病気です。中耳炎は鼓膜の奥にある中耳に炎症を起こした状態です。

急性中耳炎は感染によって中耳に膿がたまり、発熱や耳の痛みが生じる疾患です。下図の一番左側の写真は急性中耳炎です。この患者様は発熱で受診されました。中耳には膿がたまって鼓膜が赤くなって腫れています。

このような場合には投薬治療を行って頂き、その後受診された時が真ん中の写真です。鼓膜が赤く腫れていた状態が治まり、膿からオレンジ色の滲出液という液がたまった状態になっています。これが滲出性中耳炎です。

鼻水が続いていたのでしばらく鼻の治療を続けた後の写真が一番右です。滲出液もなくなり治癒されました。

治療としては中耳炎の治療に加えて、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など鼻の病気を認める場合には鼻の治療も合わせて行う必要があります。

滲出性中耳炎が3カ月上続いていて、鼓膜の病的な状態が続いたり難聴が中程度以上ある場合には、鼓膜に換気チューブを留置する手術を検討します。

一般的には中耳炎はこのような経過をたどりますが、滲出性中耳炎の状態まで改善しても、その後滲出液がなかなか治りきらない場合や、再度膿がたまることもあります。

中耳炎はご家庭では治ったかどうかわからないので、耳鼻咽喉科で診察してもらっていただきたいと思います。

花粉症のOTC薬につきまして

花粉症の季節になりました。

コロナの流行で病院の受診を控えてドラッグストアやインターネットで花粉症のお薬を購入されている方もいらっしゃるかもしれません。

今回はこれらのお薬についてお話ししたいと思います。

この季節にドラッグストアに行くと目立つところに花粉症薬が置いてあります。その中にはスイッチOTC(Over The Counter)と言って、病院で処方する薬の中で比較的安全性が高いので市販可能となった薬もあります。

お薬の特性や効果、副作用などもご理解いただいたうえで使用されたほうがより効果的と思われます。

スイッチOTCの内服薬は主に鼻水やクシャミに効果があるものが多く、またOTC薬ではないのですが、プソイドエフェドリンが配合されている薬は鼻閉に効果があるものがあります。プソイドエフェドリン配合のお薬については、循環器疾患をお持ちの方は血圧上昇・動悸・発汗などが現れる可能性があります。さらに甲状腺の病気や糖尿病の方、眼圧の高い方、排尿障害をお持ちの方の症状を悪化させてしまう可能性がありますのでご注意いただきたいと思います。

内服薬の副作用として頻度の高いものに眠気があります。

副作用で眠気が出ると困る場合には、眠気の出る頻度の少ない内服薬を選んでいただいたり、点鼻薬や漢方薬をお使いいただいても良いと思います。

点鼻薬では血管収縮薬と言われる成分を含むものが鼻閉に即効性もありますが、長期に使用すると鼻がつまってしまう薬剤性鼻炎の原因となりますので、やむを得ず使用する場合には短期間・最小限にとどめて頂きたいと思います。抗アレルギー薬やステロイド薬の点鼻薬もありますが、これらは即効性はありませんので継続してご使用されることをお勧めいたします。

漢方薬は眠気がありません。また鼻のつまりに有効な成分も含まれているものもあります。ただ漢方薬にも副作用が起こることがあります。花粉症の漢方薬としては小青竜湯が有名ですが、胃腸の弱い方は胃もたれしたり、先ほどのプソイドエフェドリンと同様に、循環器疾患をお持ちの方、眼圧の高い方、排尿障害、甲状腺疾患などをお持ちの方はご注意いただきたいと思います。

病院受診をおすすめする場合としては、スイッチOTC等の内服薬で効果のない方、重症の花粉症の方、副鼻腔炎がある方、スギ花粉症だけでなくヒノキやイネ科など複数の花粉症があり長期治療を要する方、本当に花粉症なのかどうか検査を行って診断を希望される方、自分の判断ではなく医師に相談して治療を行いたい方、また保険での診療を希望される方などです。

花粉症のお薬をお使いになられる場合に参考にしていただきたいと思います。

花粉症につきまして2022

2022年が始まりました。

今回は、春のスギ・ヒノキ花粉症についてお話しします。

大阪の今年のスギ花粉は、飛散開始が2月中旬頃、飛散量は過去10年と比較してやや少なめ・昨年に比べるとやや少なめ、ピークは3月上旬から中旬にかけてと予想されています。

スギ花粉のピークが過ぎて3月の後半になると、今度はヒノキ花粉の飛散が増え始めます。ヒノキ花粉のピークは例年並みで4月上旬から中旬にかけてと予測されています。

これらは今後の気温や天気などによって変わることがあります。

スギ花粉は、飛散開始日といわれる日よりもはやくから飛散しているため、花粉症状でお困りの方は、飛散開始日の前から、花粉対策を取っていただきたいと思います。具体的には、服装、手洗い・うがいと洗顔、窓の開閉の工夫、洗濯物の室内干しなど、十分な睡眠をとるなどして体調管理に努めて頂くこと、またそれだけでは十分に楽にならない方は薬を使用して頂きたいと思います。

現在、新型コロナのオミクロン株が流行しています。オミクロン株は感染力が強いことと、初期症状として鼻水、くしゃみ、のどの痛みなどの普通の風邪のような症状が多いため、花粉症の症状とも似ているため注意が必要です。日本耳鼻咽喉科学会ではスギ花粉症をお持ちの方は早めに治療を開始して頂きたいと啓蒙しております。

当院では花粉飛散期には、抗アレルギー薬の内服や局所療法、漢方治療、重症スギ花粉症の方に生物学的製剤のゾレア注射を行っております。

受診の際には、これまでに効果のあった薬、なかった薬の名前、眠気などで困ることはなかったかどうかなどを教えて頂けると助かります。

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当院の診療につきまして

今年もあと1日となりました。新型コロナはしばらく落ち着いていましたが、オミクロン変異株が広がる可能性があるため、年末年始は注意して過ごしたいと思っています。

さて、今年も多くの患者様にご来院いただきました。ありがとうございました。

小さなクリニックですので診療は総合病院のようなレベルではなく、また診察の待ち時間が長いなど至らないところもあると思いますが、当院では患者様に寄り添ったやさしい診療を心掛けております。

苦痛が出来るだけ少ない診察を行い、病状のご説明を丁寧に行い、治療については、押し付けにならないようにご提案と言う形をとらせて頂きます。患者様からのご要望にはできる範囲で沿いたいと考えております。

病気になるとその病気の肉体的なつらさだけでなく不安も強くなります。患者様には当院を受診して頂くことで、ご安心頂いたうえで治療を行って頂けるように努めてゆきたいと考えております。また来年もどうかお願い申し上げます。

寒い毎日が続きますので暖かくしてよいお正月をお過ごしください。

耳の異物につきまして

朝はかなり冷え込んで冬の寒さになりました。日中は日差しがあると暑いときもありますが、また夕方になると急に冷えてくるので、寒さで体を冷やさないように気をつけたいものです。

さて今回は、耳の異物についておはなししたいと思います。

耳の異物を外耳道異物と言います。

異物には様々なものがあります。ゴキブリなどの昆虫、豆などの食品、綿棒の綿、また髪の毛やペットの毛などが耳に入ってしまったり、お子様では小さなおもちゃやビーズなどを耳に入れてしまうことがあります。

   髪の毛        ペット用の石       粘土

症状としては耳の中で音がする、耳の違和感やつまり感、また炎症を起こした時や昆虫が耳の中で動くと痛みが出ることもあります。お子さんでは症状の訴えが少なく、発見まで時間がかかることもあります。

耳鼻咽喉科では、耳の内視鏡を用いて異物があるかを確認します。異物があればどんなものかを確認します。虫であれば生きているかどうかも確認する必要があります。生きている虫が入り込んでいる場合にはあらかじめ麻酔薬で虫を弱らせておく必要があります。

異物を確認出来たら、ピンセットなどの器具を用いて摘出します。

摘出後はもう一度内視鏡で耳の診察を行います。耳の穴の中が赤くなったり腫れたりしていないか、鼓膜は正常かなどを確認します。多くの場合にはその後の治療は必要ないのですが、炎症が強く起きている場合には薬の治療を行うこともあります。

 右耳にビーズを認めます   摘出後は外耳の発赤を認めます

小さなお子さんのいるご家庭では、耳だけなく、鼻やのどに何でも入れてしまう危険性がありますので、小さなものはお子さんの手の届くところに置かないように気をつけて頂きたいと思います。

虫が耳に入りこんだ可能性があるようでしたら、あらかじめその旨をお伝えいただければ参考になりますのでお願いいたします。