2024年花粉症につきまして

2月となりました。そろそろ花粉症の患者様もいらしています。

毎年花粉症症状に悩まされている方は、まだ症状はほとんどないけれど早めに投薬を受けたいと希望される方もいらっしゃいます。

本年のスギ花粉飛散は昨年と同じくらいで、例年と比較するとやや多いと予測されています。これは昨年の飛散量が非常に多かったためです。スギ花粉のピークは3月上旬から中旬にかけて、ヒノキ花粉のピークは3月下旬から4月上旬と予想されています。

現在日本では、スギ花粉症の有病率は38%で、3人に1人はスギ花粉症を持っています。このため、国や自治体などでも様々な取り組みを行っています。

具体的には、政府は昨年秋に「花粉症に関する関係閣僚会議」を行い、花粉症の発生源対策、飛散対策、発症・暴露対策の3本柱を取り決めました。

発生源対策としては、スギ人工林の伐採の加速・植え替え、花粉の少ない苗木の生産、スギ材需要を拡大してゆくことなどが検討されています。

次に、飛散対策として、森林情報の高度化、スギ雄花の花芽調査の詳細化とそのデータ公開、また、AIやスパコンを活用した、飛散予測に特化した三次元気象情報を提供するためのクラウド整備などが検討されています。

発症・暴露対策としては、診療ガイドラインの改訂、スギ舌下免疫療法治療薬の生産倍増、早めの投薬治療の開始や長期投薬の推進、マスクやメガネなどの花粉対策商品の認証や普及啓発の実施、企業に対しては健康経営優良法人認定制度に花粉症暴露対策を追加して、飛散大量日のテレワークを行うなどの企業の取り組み推進することなどが検討されています。

また、日本耳鼻咽喉科学会では、「花粉症重症化ゼロ作戦」と称して、花粉症を含むアレルギー性鼻炎に対する啓発活動を開始し、花粉症やアレルギー性鼻炎の重症化を防ぎ、 国民生活に資することを目指しています。

これらの対策は今年すぐに成果が出ないものもありますが、今後徐々に花粉症患者さんの症状を改善するためのものと考えられます。今後の成果に期待したいと思います。

今年も残すところあとわずかとなりました

今年を振り返ってみますと、春先には花粉症の方が大勢お越しくださいましたが、やはり感染症の方が多くいらした印象が残ります。

新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ、ヘルパンギーナ、アデノウイルス感染症、溶連菌感染症などの方が多く来院されただけでなく、検査しても原因がわからない高熱の方も来院されました。

通常、インフルエンザは冬季に、ヘルパンギーナやアデノウイルス感染症は夏季に流行する疾患といわれてきましたが、今年は夏にインフルエンザの方も来院され、また12月にもヘルパンギーナやアデノウイルス感染症の方も来院されました。さらにインフルエンザは12月にかなり流行をしましたので学級閉鎖なども多くの学校で起こりました。

このような状況でしたので、今年は診療が難しいと感じることも多々ありましたし、今までの私の経験だけで決めつけることの危うさも感じる一年となりました。

あと数日で新しい一年が始まります。来年は、今年と同じように季節に関係なく様々な感染症が一年中続くのか想像がつきませんが、また来年も皆さまのお役に立てるように努めたいと考えております。

来年もどうかよろしくお願い申し上げます。 

寒い日が続きますので暖かくお過ごしください。

インフルエンザ予防接種につきまして

10月も下旬となり朝夕の冷え込みが急に強くなりました。日中は暖かいので体温調節や衣服の調整が難しいと感じています。

さて、この時期になるとインフルエンザ予防接種も開始されており、すでに終わられた方もおられると思います。

一般的にはインフルエンザは夏にはあまり流行せず、寒い時期に流行するのですが、今年は夏から現在も持続的に患者様が来院されています。

今年は新型コロナ感染に対するマスクなどの感染予防対策が5月に緩和されて以降初めての冬となります。

インフルエンザワクチンは接種しても感染を予防することはできませんが、発病を予防したり、発熱の期間を短縮したり、重症化を防ぐといわれます。

患者様から、最近インフルエンザに罹患したけれどインフルエンザワクチンの接種は必要ですか?と質問されることがあります。

最近感染した場合には、体内で抗体ができますので同じウイルスにすぐに再感染することは考えにくいのですが、インフルエンザは1種類だけではありませんので感染した以外の型が流行すればまた感染する可能性があります。

インフルエンザワクチンは毎年流行が予測される4種類の株に対応してワクチンを製造をしていますので、感染したウイルス以外の株にも効果が期待できると考えられています。このためインフルエンザになった方でもワクチン接種を行う意義はあると考えられています。

ご希望の方はご検討いただきたいと思います。

ただ、ワクチンの効果は絶対的なものではないため、咳エチケット、手指消毒、手洗い、マスク着用などの感染予防対策を十分に行っていただくことがとても大切と思います。

集音器と補聴器につきまして

日中はまだまだ気温が高い日が続いておりますが、朝夕は少し涼しく感じられるようになってきました。

さて、耳が聞こえにくいことで受診される患者様の中にご自分で集音器を購入し装用されている方がおられます。

今回は集音器と補聴器の違いについてお話ししたいと思います。

補聴器とは、安全面や効果などの基準をクリアした厚生労働省の承認を受けた管理医療機器となります。

補聴器は、聞こえない音の高さを個別に調整したり、騒音の中でも言葉を聞き取りやすくしたり、耳を傷めることのないように出力に制限をかけたり、ハウリングを防止したりする機能などがあります。このこまかな調整は認定補聴器技能者や言語聴覚士といった専門家が行いますので、病院やお店に赴いて対面で調整することが一般的です。ただ最近ではスマホに連動させることで、対面でなく遠隔で調整できる補聴器もありますので店舗まで行かずに調整をすることも可能となっているようです。

補聴器はこのように一定の基準をクリアした細かな調整を行う医療機器であるため高価なものとなります。

一方で集音器とは、補聴器の様な基準はなく、家電製品の中で聞こえをサポートする機器となります。集音器は、高音から低音まで音を一律に大きくする機種が多く、それらは音の高さを個別に調整することはできません。細かな調整ができないので補聴器に比べると満足のいく聞こえを得られない可能性がありますが、最近では補聴器ほどではないにしても、スマホと連動させて音の高さや音量を変えたり、雑音を抑えたり、ハウリング抑制したりなどの様々な機能を搭載した集音器も存在します。集音器は一般的に価格は補聴器に比べて安価ですので手に入れやすいです。

補聴器と集音器のどちらが良いかという質問を受けることがあります。

機器の調整に関しては補聴器は専門家が行ってくれますが、集音器はご自分でボリュームなどの調整を行いますので、自己判断でうまく調整うまくできていない場合に耳を傷めてしまう可能性があります。

装着した感覚としてご自分にフィットして聴こえが改善するようならどちらもありだと思われます。これは個々の患者様の難聴の状態が違うために一概に補聴器が良いとか集音器が良くないとは言えないのです

難聴の比較的進んでいる方、細かい微調整が必要な方、専門家の丁寧な調整を希望される方、集音器が効果のない方は補聴器をご検討いただいたほうが良いと思われます。

補聴器でも聞こえが完璧に改善するわけではなく調整が難しい方もおられます。また数か月かけて少しずつ調整をして装用し続けることで補聴器に慣れてゆく必要もあります。補聴器はきちんとした調整を行ってくれる熟練した専門家のいる病院やお店で相談されたほうが安心です。

最近の風邪につきまして

6月になり、じめじめしたとても蒸し暑い日や、少し肌寒く感じる日、爽やかな風が心地よい快晴の日など、天気は日によって極端に変化している感じがしています。

さて、6月になっても変わらず風邪症状の患者様が多く来院されております。

症状はのどの痛み、発熱、鼻水、咳などで、一般的な風邪症状と同じですが、その中には、ヘルパンギーナや溶連菌感染症、アデノウイルス感染症の方や、また新型コロナウイルス感染の方、原因が特定できない方も多くおられます。

大阪府の報告では、現在府内はヘルパンギーナが流行しているようで、これは全国的にも同様でニュースなどでも報道されています。

ヘルパンギーナは夏にひく風邪の一つで、ウイルスの感染により起こります。多くは5歳以下の幼児に発症します。高熱が数日続き、のどが赤くなり水疱ができますので、その痛みのため食事が食べにくくなります。多くは軽症で改善しますが、水分が摂れないために脱水になったり、まれに髄膜炎などを生じますので注意が必要です。

5月に新型コロナ感染予防対策が緩和されて以降、手指衛生、マスク着用、ソーシャルディスタンス確保、換気の徹底などの感染予防対策は個人の判断に任せる形に移行しましたので、感染する機会が増えていることや、今までの感染予防対策の効果で細菌やウイルスに暴露されることが少なかったため、個人の免疫が落ちていることもその原因の一つかと言われています。

風邪に罹患すると体調が悪くなり日常生活がしんどくなりますので、やはり可能な範囲で感染予防対策をとりながら日々快適にお過ごしいただきたいと思います。

風味障害につきまして

4月も終わりとなり、春の花粉症の時期もそろそろ落ち着いてきました。

本年のスギ・ヒノキ花粉症は飛散量が多かったため、例年に比べて症状が悪化された方が多く、いつもの薬が効かないと仰られていました。

花粉症は、くしゃみ、鼻水、鼻つまり、目のかゆみといった典型的な症状のほかに、頭が重い、皮膚がかゆい、のどが痛い・イガイガする、いびきが悪化した、眠れないなどの症状も生じます。

そんな中で味が分かりにくい、食べ物がおいしくないと訴えられる方が何人かおられました。

お話を伺いましたら、塩は塩辛い、砂糖は甘いなどの味はわかるのですが、微妙なおいしさや味のさじ加減が分かりにくいという事でした。

これは、風味障害といって、鼻づまりでにおいが分かりにくくなるために味もわかりにくくなる状態です。

風味とは辞書で調べますと、飲食物のかおりや味わいとあります。珈琲や紅茶の香り、イチゴ味やバナナ味なども風味です。食事をおいしく食べるためには、味と匂いの両方が正常に働いて初めておいしいと自覚できるのです

風味障害は味覚障害全体からすると約6~7%程度といわれています。また、新型コロナ感染で味覚低下をきたした方も風味障害の可能性があると報告されています。

風味障害の治療は鼻の(においの)治療を行うことです。

今回花粉症で風味障害を訴えられた方々はそろそろ花粉症も終わりですので改善されていると考えられますが、花粉症状が改善しても治りにくい場合には風味障害ではない可能性も考えられますので病院で相談されることをお勧めいたします。

美味しそうにご飯を食べる男性のイラスト

今年のスギ花粉症につきまして

2月になり寒い日が続いておりましたので、インフルエンザや風邪ひきの患者様も受診されていますが、そろそろ花粉症の患者様もお越しになられています。

今はまだ症状はあまり強くない方が多いのですが、今年のスギ花粉は過去の平均と比較するとやや多め、昨年に比べるとやや多め、ピークは3月上旬から中旬にかけてと予想されています。

これは昨年夏の気候が高温、少雨、日照が多く、花粉の生育にとって良い条件だったためです。

スギ花粉のピークが過ぎて3月の後半になると、今度はヒノキ花粉の飛散が増え始めます。今年は、ヒノキ花粉のピークは例年並みの4月上旬から中旬にかけてと予測されています。

今年は飛散量が多くなることが予測されているので症状が出現する前から花粉対策をお取りいただくほうが良いと思います。薬の内服につきましては、一般的に症状が出始める前から服用開始したほうが良いと言われておりますので、はやめに内服を開始するか、あるいは症状が出始めたらすぐに開始できるようにあらかじめ準備しておいていただいていても良いと思います。

当院では、花粉飛散期には、抗アレルギー薬の内服や局所療法、漢方治療、重症スギ花粉症の方に生物学的製剤の注射などを行っております。内服薬の副作用としては眠気が生じることがありますが、いろいろな種類のお薬がありますのでご相談いただければと思います。

旅行や帰省で起こる耳鼻科の疾患につきまして

今年も年末となり、残すところあと数日となりました。

今年は行動制限がありませんので、年末年始には旅行や帰省などを計画されておられる方も多いと思います。

新型コロナ感染症数や季節性インフルエンザは増加傾向ですので、基本的な感染対策を行ってお気をつけいただきたいと思います。

さて、旅行や帰省によって生じる耳鼻咽喉科の病気としては、風邪やインフルエンザ、新型コロナなどの感染症以外にもあります。今回はこれらについてお話したいと思います。

まずは乗り物酔いです。乗り物酔いは内耳のバランス感覚と目の視覚情報が一致しないために自律神経が混乱して生じると言われています。対策としては、充分な睡眠、空腹や満腹を避ける、お薬を準備しておくことです。乗っている時には進行方向を向く、揺れの少ない場所に乗る、遠くの景色を眺める、換気の良いところにいることなども大切です。

二番目は航空性中耳炎です。飛行機に乗っている時に気圧の急激な変化により生じ、特に下降時に起こりやすいと言われています。水などの飲み物を飲んだり、アメやガムを食べる、あくびをするなどで予防して頂きたいと思います。可能な方は耳抜きを行っていただくことも効果的です。軽症では数時間以内に治りますが、鎮痛剤でも痛みが取れない場合や聞こえまで悪くなった場合には、なるべくはやめに耳鼻咽喉科の診察を受けて頂きたいと思います。

最後にアレルギー性鼻炎です。実家に帰ると鼻水くしゃみを連発したり、鼻症状だけでなく咳や喘鳴などの症状のためつらい思いをされる方もおられます。ほこりやダニ、ペットなどの動物のアレルギーが原因として考えられます。予防としてお薬を事前に準備しておくことが大切ですが、帰省中にもよく休むなど体調管理を行っていただきたいと思います。

寒い日が続きますがお体を冷やさず暖かくして、楽しい年末年始をお過ごし頂きたいと思います。

聞き取りにくさにつきまして

猛暑の夏が続いていましたが、最近は比較的涼しくなってきました。

さて今回は 聞き取りにくさについてお話ししたいと思います。

耳鼻咽喉科外来を受診される方の中で、人と話す時に聞き取りにくいと言われて受診される方がいらっしゃいます。

診察では、外耳や鼓膜に異常がないか確認して聴力検査や鼓膜の動きの検査などを行います。突発性難聴などの異常があればその治療を行いますが、診察や検査で異常がない場合もみられます。

患者様のお話しを聞くと様々な聞き取りにくさがあります。

周りがざわざわしているときに聞き取りにくい、聞き間違いが多い、複数の人と話すと聞き取りにくい、電話が聞き取りにくい、特定の人の声が聞き取りにくい、音は聞こえるが言葉として聞き取りにくい、話す内容が理解できないなどです。

聴力検査で異常はないのに聞き取りにくい症状の場合には「聴覚情報処理障害」も考えられます。聴覚情報処理障害は脳の中での聴覚の情報をうまく処理することができないために難聴と同じような状態を引き起こします。聴覚の検査だけでなく脳の機能や発達なども含めて様々な多角的な検査を行いますが、この疾患の診療を行っている医療施設はとても少ないのが現状です。

「聞き取りにくさ」は耳だけでなく脳の機能も関係しますので、将来的には耳から脳まで総合的に「聞き取りにくさ」が解明されることを期待しています。

寒暖差による鼻水につきまして

6月というのに梅雨も明けて真夏の日差しと暑さが厳しくなってきました。エアコンをうまく利用して過ごしてゆきたいと思います。

今回は寒暖差による鼻炎につきましてお話しします。

暖かい所から寒い場所へ移動したり、朝起きた時やクーラーの冷たい空気を吸ったり時にさらさらした鼻水、くしゃみ、鼻つまりを生じる鼻炎は、寒暖差アレルギーと呼ばれることがあります。

これは、正式には冷気吸入性鼻炎、寒冷性鼻炎などと呼ばれます。

鼻の血管は自律神経によって調整されています。冷たい空気や急激な温度変化に対して自律神経の調節がうまくいかない場合に鼻の症状が現れます。

症状はアレルギー性鼻炎と似ていますが、スギやダニなどに特定のアレルゲンにより引き起こされるものではなく、純粋なアレルギー反応ではありません。

診断としては、アレルギー検査を行います。検査でアレルギーと確定できない場合に血管運動性鼻炎の可能性があり、寒暖差による鼻炎はこの血管運動性鼻炎と言われる病態に近いと言われています。

寒暖差による鼻炎に確立された治療法はありませんので、アレルギー性鼻炎に用いる抗アレルギー薬を代用します。これらの薬で効果のある方もおられますが、効果が出ない方もおられます。漢方薬などで治療を行うこともあります。

アレルギー性鼻炎以外の鼻炎については、まだまだ分かっていないことも多くあります。今後の解明を期待したいと思います。