5月は新緑のさわやかな季節という印象ですが、今年は早くも梅雨に入ってじめじめした日が多いですね。
さて今回は「聴こえの老化」についてお話したいと思います。
年をとってゆくと聞こえが悪くなるという事は皆さんよくご存じだと思います。
年齢による耳の衰えは30代から始まると言われています。65歳から急に増えて、75歳以上では男性で71%、女性67%の方に難聴があると報告されています。個人差も大きいです。
老化してゆく原因としては、遺伝も関係しいますし、騒音や、糖尿病・循環器疾患・脳血管疾患といった全身疾患も関係します。これらのために、耳の中で活性酸素が多くなり細胞が傷んでしまうと言われています。
特長としては
1.高い音から順に聞こえにくくなります。高い音が聞こえにくくなると、カ行、サ行、タ行、ハ行が聞き取りにくくなります。
2.声は聴こえても、しゃべっている意味が分かりにくくなります。
3.早口や、雑音がある中での聴きとりが悪くなります。
聴こえの老化は、ただ耳のはたらきが低下するだけでなく、脳の働きが低下する、認知機能が低下する、この3つが関係してすすんでゆきます。
瞬間的な情報を処理する速度が落ちたり、どんどん変化する会話音の情報を分析しきれなくなります。高齢の方は(若い人と比べて)脳の活動を高めてることで、耳の機能低下による聞き取りにくさを補っているので、高齢の方ほど聴こえの情報を処理するのに認知機能にたよっています。
ですから認知機能の低下を予防することが重要で、生活習慣の改善、音楽、運動、知的活動などを積極的に行うことが大切といわれています。
また、周囲の人には、ゆっくりしゃべってもらうこと、顔のよく見える位置でしゃべっていただくことをお願いします。
老化による難聴を予防するためには大きな音を避けることも重要です。
WHO(世界保健機関)は携帯型音楽プレーヤーやスマートフォンなどで大音量の音を長時間聴くと、若い世代(12~35歳)でも多くの人が難聴になる恐れがあると警鐘を鳴らしていますので、若い方もぜひ気を付けていただきたいと思います。
サプリメントについては確立されたものはないようです。
聴こえの老化を改善する治療ですが、現時点では耳~脳~認知機能の聴覚のネットワークを総合的に改善させる方法はないため、聞こえが悪くなってしまったら補聴器を検討するしか方法はないようです。今後は再生医療や薬剤などに期待したいと思います。
聴こえなくなってからの期間が長くなると聴能が衰える可能性が高くなります。難聴のある方は聴こえが正常の方と比べて、認知機能の低下や抑うつの頻度が高くなることから、聴こえにくくなるようであれば耳鼻咽喉科を早めに受診していただき、適応があるようでしたら、はやめに補聴器をご検討していただくことがよいと思います。