前回は補聴器のお話をさせていただきましたが、今回もその続きです。
補聴器は慣れるまでに数カ月かかることなどお話ししましたが、補聴器の取扱いにも慣れていただく必要があります。
お風呂に入るときや寝るときには外す、なくさないように気を付ける、電池が切れたら交換をする、などです。
耐用年数は一般的には丁寧に使用しても5~7年程度と言われています。 定期的メンテナンスを行うことでより長くご使用いただけるようになります。 故障した場合には買い替えが必要となります。
また、補聴器は医療機器ですので高額なところがネックとなります。
耳に掛けるタイプのもので必要な機能を備えた補聴器は1個が十数万円程度です。両耳に装用する場合には2倍近い金額が必要となります。
さらに高機能を希望される場合、1個数十万円のものもあります。 高機能とは、例えば耳の中にすっぽり入って周りからは見えないものや、スマートフォンとつないで、スマートフォンで補聴器を調整したり、直接補聴器に音楽を流して聴いたり、補聴器の場所を探したりするもの、また両耳の補聴器間で通信することが可能なものなどがあります。
このように高額な補聴器ですが、補聴器はご自分の耳とは異なりますので、昔の聞こえていた頃のご自分の耳と全く同じ聞こえに戻るわけではありません。したがって限界はあるということもご理解いただく必要があります。例えば大勢での集会、周りが騒がしい中での会話などは補聴器の苦手なところです。
補聴器にかかわる公的な補助制度としては、身体障害に該当する高度の難聴のある方、難病の指定を受けられている方、労働災害によって生じた難聴の方が対象となります。また小児では、身体障害に該当しない軽度・中等度難聴に対しても自治体によっては助成がある場合もあります。
片耳装用と両耳装用とどちらが良いのですか?と質問があります。個々の患者様の状況によっても異なりますが、基本的には両耳装用をおすすめします。その方がより多くの音を拾うことができるからです。ただこれは絶対ではありません。
近年では難聴と認知機能の低下との関係が言われています。難聴があるから認知症になりやすいとか、補聴器をつけたら認知症にならない、とはいえませんが、耳が聞こえなくて他の人とのコミュニケーションを取らない方は社会的に孤立しやすいために認知機能が低下する可能性があるといわれています。ですので聞こえにくくなったら 早めの段階から補聴器を開始したほうが認知機能の低下を遅らせることはできるかもしれないと考えられています。
さらに本年からは新型コロナウイルス感染防止対策のための新しい生活様式となり、マスクやソーシャルディスタンス、シールドやアクリル板越しに話をされることも多いと思いますの。聴こえの低下した方は他人との会話がより難しい時代になっていますので補聴器を上手く利用して頂きたいと考えています。
また、ご本人には(補聴器を使って)会話を楽しみたい、というモチベーションを持っていただくこともとても大切です。そのためには補聴器を装用される方の周りの方のご協力も大変重要です。補聴器を装用して聞こえが少しでもよくなったら、ご家族や友人と冗談を言って笑い合ったり、感謝の言葉や温かい声掛けなど、楽しく、うれしくなる会話をしていただきたいと願っています。