聴力検査について

朝晩が肌寒くなり、晴れた日には透き通った清々しさを感じる季節となりました。

さて、今回は自分の聴力を調べてみることにしました。

患者様と同じように聴力検査室に入って検査を行います。かなり集中していましたので、終わった時点で疲労感がありました。患者様は比較的長い時間をかけて検査をされますので、今回その大変さが理解できました。

下の表は検査の結果です。赤い〇は右耳を、青い×は左耳を測定したものです。周波数は左ほど低い音を、右ほど高い音を表しています。縦軸の聴力レベルは25デシベルよりも上であれば正常となります。

これは単純に音が聞こえるかどうかの検査ですので、この検査結果が正常でも言葉の聞き取りが悪いこともあります。

また、耳の聞き取り能力だけでなく、話す相手のしゃべり方、声の大きさ、声の質、雑音などの周囲の環境によっても言葉の聞き取りは変わってきますので、やはり聞き取りにくさの評価は難しいと感じます。

聞き取り困難症/聴覚情報処理障害につきまして

暑い日が続いております。あまりに暑いのでエアコンを使用するのですがエアコンの温度管理がうまくいかない時には体が冷えますので体調管理が難しいと感じているこの頃です。

さて、以前のブログでも「聞き取りにくさ」についてお話ししたことがあります。

聞き取りにくいと感じておられる方の中で、静かなところや、1対1での会話では問題がないのに、複数の人との会話や騒がしいところでは聞きたい言葉が聞き取れない方がおられます。

このような方の中で、音の聞こえの検査や言葉の聞き取り検査で異常を認めない場合には「聞き取り困難症」を疑います。日本では120 万人程度の患者さんが存在する可能性があると考えられており、主に職場での会話や学校の授業が聞き取れなくて困られることが多いです。

診断には耳鼻咽喉科の診察と聴力検査を行い、耳垢や中耳炎や難聴などの異常があるかどうかを確認し、異常を認めない場合に聞き取り困難症の可能性を考えます。

聞き取り困難症は、聴覚情報を処理する部分の問題だけではなく、認知、特に注意の問題、記憶の問題、語彙や理解など言語の問題などが複合的に関係していると考えられています。病態を把握するために聴覚情報処理や、発達などの検査を行うことが望ましいとされておりますので、疑われる患者様は病院へ紹介させていただくことがあります。

聞き取り困難症に対する対応としては、補聴援助システムを利用したり、騒音抑制機能付きデジタル耳栓を用いることが有効な場合があります。また個々の患者様の聞き取りにくさに応じた対策・適応策を考えること、周囲の方々の理解を深めてどのように支援するかを考えることなどが重要と言われています。

夏の花粉症につきまして

今年は梅雨入りが例年に比べて遅くなりましたが、最近は悪天候で暑く湿度が高い日も増えてきました。

春の花粉症は例年GW頃に終了することが多いため、GW後には症状は落ち着かれると思いますが、夏の花粉症をお持ちの方はGW過ぎても鼻症状でお困りの方もいらっしゃいます。

夏の花粉症のうち、頻度の高いものとしては、カモガヤ、オオアワガエリなどのイネ科花粉症です。4月から秋ごろまで症状が続きます。イネ科の雑草は似たような抗原を持つため、複数のイネ科に反応していることもあります。

ヨーロッパでは、カモガヤは牧草として用いるためカモガヤアレルギーの方が多いです。日本にはヨーロッパから牧草として輸入されましたが、繁殖力が強いため野生化したものが空き地や道端、川沿いに生息しています。

イネ科花粉はスギ花粉よりも飛散距離が短く、十数メートルから数百メートル程度までと遠くに飛ばないので、夏には公園や河川に近づかないことで夏の花粉症を予防できる場合もあります。

イネ科花粉症の治療としては、スギヒノキ花粉症と同様で、症状が強い場合には抗アレルギー薬を用いて症状を抑えることとなります。

また、イネ科の牧草(チモシー、オーチャードグラス)はウサギやネズミの飼育に使用されるため、ペットアレルギーとしての原因にもなり得ます。この場合にはハウスダストやダニと同様に季節は無関係に鼻炎症状が続きます。

夏になっても鼻炎症状が続いてお困りの方は、イネ科花粉症があるのかどうかを血液検査で調べられてみても良いかと思います。

黄砂につきまして

穏やかで過ごしやすい季節となりました。

この時期には黄砂も気になります。

黄砂とは主に中国大陸の砂漠地帯から強い風で巻き上げられた砂が偏西風に乗って運ばれて飛来する粒子です。偏西風は3~5月に強くなるため今の時期にはその影響を受けることが多くなります。

黄砂は岩や粘土の鉱物でできていますが、黄砂粒子には微生物成分や大気汚染物質が付着しています。

黄砂による健康への影響としては、喘息やアレルギー性鼻炎、結膜炎、皮膚炎だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも上がるといわれています。

2~4月はスギ・ヒノキ花粉症の時期と重なるため花粉症との関係が問題となります。

アレルギー性鼻炎患者さんでは、黄砂の飛来によって、アレルギー性鼻炎を持たない人に比べてより多くの人に症状が出るといわれています。これは花粉症によって鼻粘膜の過敏性がすでに増していることや、黄砂に付着する微生物成分や大気汚染物質が鼻粘膜の炎症を引き起こすことが考えられています。

つまり黄砂自体はアレルギー源にはならないけれど、アレルギー反応を促進させ増強する作用があるものと示唆されています。

黄砂対策としては、①黄砂情報をチェックする、②飛来時には外出を控える、③マスクやうがいを行う、④洗濯物は部屋干しにするなどです。

黄砂による症状の出やすい方は飛来時には十分な対策をとっていただきたいと思います。

2024年花粉症につきまして

2月となりました。そろそろ花粉症の患者様もいらしています。

毎年花粉症症状に悩まされている方は、まだ症状はほとんどないけれど早めに投薬を受けたいと希望される方もいらっしゃいます。

本年のスギ花粉飛散は昨年と同じくらいで、例年と比較するとやや多いと予測されています。これは昨年の飛散量が非常に多かったためです。スギ花粉のピークは3月上旬から中旬にかけて、ヒノキ花粉のピークは3月下旬から4月上旬と予想されています。

現在日本では、スギ花粉症の有病率は38%で、3人に1人はスギ花粉症を持っています。このため、国や自治体などでも様々な取り組みを行っています。

具体的には、政府は昨年秋に「花粉症に関する関係閣僚会議」を行い、花粉症の発生源対策、飛散対策、発症・暴露対策の3本柱を取り決めました。

発生源対策としては、スギ人工林の伐採の加速・植え替え、花粉の少ない苗木の生産、スギ材需要を拡大してゆくことなどが検討されています。

次に、飛散対策として、森林情報の高度化、スギ雄花の花芽調査の詳細化とそのデータ公開、また、AIやスパコンを活用した、飛散予測に特化した三次元気象情報を提供するためのクラウド整備などが検討されています。

発症・暴露対策としては、診療ガイドラインの改訂、スギ舌下免疫療法治療薬の生産倍増、早めの投薬治療の開始や長期投薬の推進、マスクやメガネなどの花粉対策商品の認証や普及啓発の実施、企業に対しては健康経営優良法人認定制度に花粉症暴露対策を追加して、飛散大量日のテレワークを行うなどの企業の取り組み推進することなどが検討されています。

また、日本耳鼻咽喉科学会では、「花粉症重症化ゼロ作戦」と称して、花粉症を含むアレルギー性鼻炎に対する啓発活動を開始し、花粉症やアレルギー性鼻炎の重症化を防ぎ、 国民生活に資することを目指しています。

これらの対策は今年すぐに成果が出ないものもありますが、今後徐々に花粉症患者さんの症状を改善するためのものと考えられます。今後の成果に期待したいと思います。

今年も残すところあとわずかとなりました

今年を振り返ってみますと、春先には花粉症の方が大勢お越しくださいましたが、やはり感染症の方が多くいらした印象が残ります。

新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ、ヘルパンギーナ、アデノウイルス感染症、溶連菌感染症などの方が多く来院されただけでなく、検査しても原因がわからない高熱の方も来院されました。

通常、インフルエンザは冬季に、ヘルパンギーナやアデノウイルス感染症は夏季に流行する疾患といわれてきましたが、今年は夏にインフルエンザの方も来院され、また12月にもヘルパンギーナやアデノウイルス感染症の方も来院されました。さらにインフルエンザは12月にかなり流行をしましたので学級閉鎖なども多くの学校で起こりました。

このような状況でしたので、今年は診療が難しいと感じることも多々ありましたし、今までの私の経験だけで決めつけることの危うさも感じる一年となりました。

あと数日で新しい一年が始まります。来年は、今年と同じように季節に関係なく様々な感染症が一年中続くのか想像がつきませんが、また来年も皆さまのお役に立てるように努めたいと考えております。

来年もどうかよろしくお願い申し上げます。 

寒い日が続きますので暖かくお過ごしください。

インフルエンザ予防接種につきまして

10月も下旬となり朝夕の冷え込みが急に強くなりました。日中は暖かいので体温調節や衣服の調整が難しいと感じています。

さて、この時期になるとインフルエンザ予防接種も開始されており、すでに終わられた方もおられると思います。

一般的にはインフルエンザは夏にはあまり流行せず、寒い時期に流行するのですが、今年は夏から現在も持続的に患者様が来院されています。

今年は新型コロナ感染に対するマスクなどの感染予防対策が5月に緩和されて以降初めての冬となります。

インフルエンザワクチンは接種しても感染を予防することはできませんが、発病を予防したり、発熱の期間を短縮したり、重症化を防ぐといわれます。

患者様から、最近インフルエンザに罹患したけれどインフルエンザワクチンの接種は必要ですか?と質問されることがあります。

最近感染した場合には、体内で抗体ができますので同じウイルスにすぐに再感染することは考えにくいのですが、インフルエンザは1種類だけではありませんので感染した以外の型が流行すればまた感染する可能性があります。

インフルエンザワクチンは毎年流行が予測される4種類の株に対応してワクチンを製造をしていますので、感染したウイルス以外の株にも効果が期待できると考えられています。このためインフルエンザになった方でもワクチン接種を行う意義はあると考えられています。

ご希望の方はご検討いただきたいと思います。

ただ、ワクチンの効果は絶対的なものではないため、咳エチケット、手指消毒、手洗い、マスク着用などの感染予防対策を十分に行っていただくことがとても大切と思います。

集音器と補聴器につきまして

日中はまだまだ気温が高い日が続いておりますが、朝夕は少し涼しく感じられるようになってきました。

さて、耳が聞こえにくいことで受診される患者様の中にご自分で集音器を購入し装用されている方がおられます。

今回は集音器と補聴器の違いについてお話ししたいと思います。

補聴器とは、安全面や効果などの基準をクリアした厚生労働省の承認を受けた管理医療機器となります。

補聴器は、聞こえない音の高さを個別に調整したり、騒音の中でも言葉を聞き取りやすくしたり、耳を傷めることのないように出力に制限をかけたり、ハウリングを防止したりする機能などがあります。このこまかな調整は認定補聴器技能者や言語聴覚士といった専門家が行いますので、病院やお店に赴いて対面で調整することが一般的です。ただ最近ではスマホに連動させることで、対面でなく遠隔で調整できる補聴器もありますので店舗まで行かずに調整をすることも可能となっているようです。

補聴器はこのように一定の基準をクリアした細かな調整を行う医療機器であるため高価なものとなります。

一方で集音器とは、補聴器の様な基準はなく、家電製品の中で聞こえをサポートする機器となります。集音器は、高音から低音まで音を一律に大きくする機種が多く、それらは音の高さを個別に調整することはできません。細かな調整ができないので補聴器に比べると満足のいく聞こえを得られない可能性がありますが、最近では補聴器ほどではないにしても、スマホと連動させて音の高さや音量を変えたり、雑音を抑えたり、ハウリング抑制したりなどの様々な機能を搭載した集音器も存在します。集音器は一般的に価格は補聴器に比べて安価ですので手に入れやすいです。

補聴器と集音器のどちらが良いかという質問を受けることがあります。

機器の調整に関しては補聴器は専門家が行ってくれますが、集音器はご自分でボリュームなどの調整を行いますので、自己判断でうまく調整うまくできていない場合に耳を傷めてしまう可能性があります。

装着した感覚としてご自分にフィットして聴こえが改善するようならどちらもありだと思われます。これは個々の患者様の難聴の状態が違うために一概に補聴器が良いとか集音器が良くないとは言えないのです

難聴の比較的進んでいる方、細かい微調整が必要な方、専門家の丁寧な調整を希望される方、集音器が効果のない方は補聴器をご検討いただいたほうが良いと思われます。

補聴器でも聞こえが完璧に改善するわけではなく調整が難しい方もおられます。また数か月かけて少しずつ調整をして装用し続けることで補聴器に慣れてゆく必要もあります。補聴器はきちんとした調整を行ってくれる熟練した専門家のいる病院やお店で相談されたほうが安心です。

最近の風邪につきまして

6月になり、じめじめしたとても蒸し暑い日や、少し肌寒く感じる日、爽やかな風が心地よい快晴の日など、天気は日によって極端に変化している感じがしています。

さて、6月になっても変わらず風邪症状の患者様が多く来院されております。

症状はのどの痛み、発熱、鼻水、咳などで、一般的な風邪症状と同じですが、その中には、ヘルパンギーナや溶連菌感染症、アデノウイルス感染症の方や、また新型コロナウイルス感染の方、原因が特定できない方も多くおられます。

大阪府の報告では、現在府内はヘルパンギーナが流行しているようで、これは全国的にも同様でニュースなどでも報道されています。

ヘルパンギーナは夏にひく風邪の一つで、ウイルスの感染により起こります。多くは5歳以下の幼児に発症します。高熱が数日続き、のどが赤くなり水疱ができますので、その痛みのため食事が食べにくくなります。多くは軽症で改善しますが、水分が摂れないために脱水になったり、まれに髄膜炎などを生じますので注意が必要です。

5月に新型コロナ感染予防対策が緩和されて以降、手指衛生、マスク着用、ソーシャルディスタンス確保、換気の徹底などの感染予防対策は個人の判断に任せる形に移行しましたので、感染する機会が増えていることや、今までの感染予防対策の効果で細菌やウイルスに暴露されることが少なかったため、個人の免疫が落ちていることもその原因の一つかと言われています。

風邪に罹患すると体調が悪くなり日常生活がしんどくなりますので、やはり可能な範囲で感染予防対策をとりながら日々快適にお過ごしいただきたいと思います。

風味障害につきまして

4月も終わりとなり、春の花粉症の時期もそろそろ落ち着いてきました。

本年のスギ・ヒノキ花粉症は飛散量が多かったため、例年に比べて症状が悪化された方が多く、いつもの薬が効かないと仰られていました。

花粉症は、くしゃみ、鼻水、鼻つまり、目のかゆみといった典型的な症状のほかに、頭が重い、皮膚がかゆい、のどが痛い・イガイガする、いびきが悪化した、眠れないなどの症状も生じます。

そんな中で味が分かりにくい、食べ物がおいしくないと訴えられる方が何人かおられました。

お話を伺いましたら、塩は塩辛い、砂糖は甘いなどの味はわかるのですが、微妙なおいしさや味のさじ加減が分かりにくいという事でした。

これは、風味障害といって、鼻づまりでにおいが分かりにくくなるために味もわかりにくくなる状態です。

風味とは辞書で調べますと、飲食物のかおりや味わいとあります。珈琲や紅茶の香り、イチゴ味やバナナ味なども風味です。食事をおいしく食べるためには、味と匂いの両方が正常に働いて初めておいしいと自覚できるのです

風味障害は味覚障害全体からすると約6~7%程度といわれています。また、新型コロナ感染で味覚低下をきたした方も風味障害の可能性があると報告されています。

風味障害の治療は鼻の(においの)治療を行うことです。

今回花粉症で風味障害を訴えられた方々はそろそろ花粉症も終わりですので改善されていると考えられますが、花粉症状が改善しても治りにくい場合には風味障害ではない可能性も考えられますので病院で相談されることをお勧めいたします。

美味しそうにご飯を食べる男性のイラスト