においの老化につきまして

朝夕は少しずつ涼しくなり、夜には虫の声が大きくなり季節の変化を感じるようになりました。

さて、今回はにおいの老化についてお話しさせていただきたいと思います。

一般的には、においが分からなくなる原因としては、鼻副鼻腔炎や風邪の後、頭の外傷や薬が原因となります。最近では新型コロナウイルス感染で嗅覚障害を起こすことも広く知られています。また嗅覚障害はアルツハイマー型認知症などの神経疾患の初期症状のこともあります。

年を取ると体の各部分が徐々に老化してゆくように、においの働きも徐々に老化してゆきます。

においは10~20歳代がピークでその後徐々に低下し、男性は60歳台、女性は70歳台から有意に低下し、80歳を超えると75%以上の方が嗅覚障害をもつと言われています。

特徴としては、視覚障害や難聴と違ってほとんどの人は嗅覚の低下に気が付いていないということです。

においの神経細胞は、炎症などが原因で消失するとまた新しい細胞が再生するという特別な性質を持ちますが、加齢による嗅覚障害ではにおいの神経細胞の生まれ変わりや再生も起こりにくくなり、嗅覚の粘膜上皮の面積が減少します。

嗅覚が分からなくなると日常生活に支障をきたします。特に困ることは、料理の味付けがうまくできなくなるという料理に関係すること、食品の腐敗やガス漏れや煙に気が付かないという危険に関係したことが起こります。 

危険を回避する方法としては、食品腐敗については消費期限の確認を行うこと、ガス漏れや火災についてはガス検知器火災報知器を設置しておくことです。

料理の味付けについてはご家族で味を確認していただくことが良いと思われます。

加齢性嗅覚障害に対しては特別な治療法がないため、嗅覚障害であることを周囲の方に理解してもらう必要があります。

嗅覚刺激療法も加齢性嗅覚障害に予防効果があると言われています。まだ日本では決められた訓練法はかくりつしていませんが、朝晩2回、10秒ずつ何かのにおいを嗅ぐ行為が嗅覚の改善に有効と言われています。

嗅覚の低下を予防するために毎日何かのにおいを意識して嗅ぐようにされることがよいと思います。